ブラック企業の代名詞とされてきた「ワタミ」。
’08年に長時間労働による過労自殺が発生し、’13年には「365日24時間死ぬまで働け」と書かれた理念集が報道されました。
ブラック企業大賞を受賞。
そんなワタミが、労働組合結成などから、 会社の体質も徐々に変化 してきているといいます。
今や業界のホワイト企業として君臨?
働く側の目線で、 新生ワタミの再起は本当 か調べました。
目次
今、なぜ創業者の渡邉氏が復帰したのか?
2019/9/27に、創業者である渡邉美樹取締役(59)が8年ぶりに代表取締役会長に復帰する人事を発表しました。
自民党参院議員であった渡邉氏は、安倍政権への不満を明かし、参院定数6増や金融政策への反発をしながらも政界を引退しました。
政界引退後は、経営者育成や発展途上国支援を続けると言われていました。
具体的には、どう活動されるのでしょう?
渡邉氏のブログより。。。
参院議員の任期満了日以降、まずは2〜3カ月かけて国内外の現場をまわり社員の声に耳を傾けたい。肩書きや立場はその後でと考えている。
ワタミは6次産業に加えて、ゴミのリサイクルや、自然エネルギー、さらにカンボジアの教育支援まで、独自のワタミモデルを構築してきた。
その活動や理念は、国連が定める「SDGs(持続可能な開発目標)」とも重なる。
あまり知られていないワタミの「SDGs経営」をより具体的に、より発展的にしたいと思っている。
社員が成長した今のワタミで、トップダウン経営に戻すつもりはない。
その昔の私は、トップダウン経営を進めてきた。メニューの味や価格まですべて私が決めていた。
積極提案をしてくる人材が本当に増えた。一方、私らしい経営判断はしていきたい。
「復帰は渡邉氏から無理強いしたと思われそうですが、実際は他の外食企業から顧問オファーが殺到したこともあり、ワタミ側から『他社に行くと脅威になるので、ぜひウチへ』と依頼したのです」とワタミ関係者は話します。
ワタミは、居酒屋、介護、宅配弁当の会社と思っていましたが、もっと大きなビジョンを持つ会社だったんですね。
居酒屋の業態ブランドの寿命とは ?
居酒屋の流行り廃りを考えたことありますか?
「〇〇チェーンて、最近人気ね。」とか、「いっぱいあったお店が減ったね」などは、街を歩きながら、自然と会話に出てきますが、経営する側からしたら、シビアな大問題ですね。
渡邉氏のブログより。。。
居酒屋の業態ブランドの寿命は5年と言われる。「和民」という私が作ったブランドは15年近く圧倒的な存在であった。私が経営から離れるころすでに、その寿命が来ていた。継承の反省である。本来、PDCA(計画、実行、評価、改善)は私が政治の世界で提案し続けた、経営の原理原則であり、官僚にも、現状肯定を散々批判してきた。
2014年10月の週刊朝日には、堀江貴文さんが寿命を迎えつつある居酒屋について書いています。
格安が売りだったのに、もっと安い業態が出てきた 。 長引いていたデフレの影響で居酒屋業界にとどまらず、いろいろな業種で激安勝負が行われてきたが、それは主に人件費へのしわ寄せとなり、ブラック企業の代名詞みたいな形で「和民」も扱われるようになった。 居酒屋でもさまざまな新しい業態を開発しているところは今でも元気である。ただただ古い居酒屋という業態で、そこそこおいしい物を食べさせればいいという時代ではなくなってきているのだ。当たり前のことであるが、常にイノベーションを起こし続けなければならない。
今の時代、居酒屋はどこに行っても美味しいですよね。
大手チェーンは、安定した味は一つの売りですが、特別感を持つかというと弱いですね。
特別感を求めるとしたら、店のスタッフやそれぞれの店の雰囲気の違いでしょうか。
なぜ、ブラックワタミは生まれたか?
ワタミの社員は働くことに前向きな人が多く、経営側がそこに甘えた結果がブラック環境を招きました。
以前働いていた人は。。。
会社全体の風潮として、居酒屋で自殺者が出る様な勤務体系だったと言います。
介護施設も 夜勤明けで日勤や、毎日サビ残、夜勤含む17日連続勤務で、公休日に研修やら理念テストで月の休み実質4日という現実があったようです。
同期入社した人が勤務中に過労で倒れ入院しました。
各グループの幹部は皆、元は居酒屋上がりで無茶苦茶な勤務体系をくぐり抜けてきた人達のようです。
それが各グループに浸透し現場でもその風潮は見られます。
長時間残業の強要などの
労働環境上の問題が多い企業であることは確かでしょう。
線引は難しいですね。働いている人の責任感の強さに、当時の経営陣が自分の通った道でもあり、甘えたということでしょうか?
仕事を投げ出すことがない、素晴らしい社員に恵まれていたことがわかります。
ブラック企業からホワイト企業へワタミの変革とは?
ワタミは’13年に外部有識者による業務改革検討委員会を設置し、労働環境改善の対応策を実施しました。
「ワタミ=ブラック企業」というイメージを決定づけらていましたが、 年間離職率は、’16年は21.6%だったのに対し、’19年は8.5%と業界水準を大きく下回るレベルを達成しています。
この2~3年で労働環境は大幅に改善され、“ホワイト化”を目指した成果が出てきているようです。
’16年に発足した労働組合の影響は大きく、経営者と話し合いの場をつくることができ、 会社の体質も徐々に変化してきたと言います。
外食産業では、 会議や研修を効率化し、メンタルヘルス相談窓口を設置したほか、特に効果的だったのは、店舗数削減と営業時間の見直しです。
1年間で全店舗の約1割相当にあたる60店舗を閉鎖し、来店が少ない時間帯の営業時間を短縮することで社員の負担を減らしました 。
老人ホームは、17年度中には離職率を15%程度にし、18年度中には離職率を10%にすることを全役員の共通の目標にし、採用コストが削減し、 職員の処遇改善することで、 業務も効率化が進み、介護技術も向上するという “ホワイト化” に向けて、動き出していたようです。
具体的には、LINEで社長以下役員と新入社員でグルーピングして、いろいろ悩みがあったら聞くなど会話を試みて、新卒から大事に育てたいと思っているようです。
産業別労働組合・UAゼンセンに加盟するワタミメンバーズアライアンス委員長である亀本伸彦氏は、 それまでは従業員が会社に対して意見を言うという発想がありませんでした。それが、労働組合が生まれたことでヨコのつながりが強化され、“自分たちの会社のことは自分たちで決める”という考えが出てきた。会社の社風も以前ほどトップダウンではなくなったと思います と話します。
労働組合の発足で’17年には賃金ベースアップ、’19年に勤務間インターバル制度の導入を実施するなど、労働条件の改善は進んだようです。
社員の現状と 渡邉氏の復帰
入社10年目の社員は、 「昔は有休は取れないしサービス残業もありましたが、今は海外旅行や趣味を楽しむ社員も増えました。本社の残業管理の徹底と、コンプライアンス窓口の設置が大きかったと思います。窓口はアルバイトにも開放されて不正をした社員が通報されたりして、ここ数年で劇的に変わりましたよ」 と話します。
残業は1分単位で給料がつき、会議やイベントも勤務時間と扱われるようになったと言います。
1分単位の給料は、聞いたことがありません。社員のモチベーションも維持できますね。
ディズニーランドの割引が利いたり食事券が配られたり、働くことでの見返りが増えたと、 途中から福利厚生が良くなったと元アルバイトは言います。
改善策を積み重ねた結果、ホワイト財団による“ホワイト企業度診断”で、87点(ホワイト認定基準は60点)を獲得し、業界内のロールモデルと呼ばれるまでになったようです。
創業者の復帰にドキドキしている社員もいるかもしれません。
渡邉氏はブログで、
14日のワタミの決算発表会で、今後10年で売上高を今の倍の2000億円にする中期経営計画を発表した。大手外食チェーンと枕詞(まくらことば)がつくワタミだが、今回「ワタミの宅食」が主力事業になると宣言した。 お弁当と一緒に「まこごろ」も届けるという理念が最大の強みで、さまざまな提携やビジネスプランが持ち上がっているが「アマゾンにできないことをする」と明確な指針を出している。 9年連続業界1位のワタミの宅食の取り組みだ。決算発表会で、記者から「足元の景気や経済の見通し」を質問された。この年末の居酒屋の宴会コースなどは、低価格に人気が集中しており、今後さらに消費税増税の影響は出てくると思う。さらに、オリンピックの後の日本経済の先行きは、きびしい見通しだ。しかしそれを前提とした経営をしていく。10年右肩上がりの図と、その裏付けとなる経営戦略、さらに課題解決を発表した。
数年前、会社の上層部に意見することができず、ブラック企業の代名詞とまで言われたワタミですが、良い人材に恵まれて、素晴らしい変革を成し遂げました。
「積極提案をしてくる人材が本当に増えた。」と、 渡邉氏が言うように、社員が会社のために、会社が社員のために、最高の形で、相乗効果が働いているのがわかります。
最後までご購読ありがとうございました。